水没したEV車やHV車に近づいても大丈夫?

 

台風2号の影響から、観測史上1位や6月1位の記録的大雨に見舞われた日本列島。各地で災害を発生させ多くの人たちに影響が出ました。クルマの水没も多く発生しましたが、水没したEV車やHV車に近づいてもよいのか不安に思う方もいます。

 

そこで、本当のところを解説したいと思います。

 

 

クルマはEV車やHV車も12Vバッテリーを積んでいるので、電気を使っています。つまり、昔ながらの12Vのバッテリーが積まれているわけですが、なぜか内燃機関のクルマに関しては水没しても近寄るなという話は聞かれません。

 

その理由は、電圧がEV車とHV車で全然違うからです。だから巷ではEV車とHV車の水没車に近寄るなという話が独り歩きしてしまっています。

 

さらに、整備する場合も完全に絶縁対策をしてシステムに触るよう指示もありますし、取扱説明書にも牽引などの時は、感電防止の絶縁対策するよう記載があります。これも水没で感電の危険を感じさせる要因の一つではないでしょうか。

 

しかし実際のところ、国内メーカーが販売するEV車やHV車に限っては、あらゆる状況でのテストが行われており、水没しても感電しないような仕組みが取られています。

 

さらに、事故でEVやHVシステムが破損しても、瞬時にブレーカーが落ちて漏電しない仕組みが取られているので実際水没で感電が起きる心配はないといえます。

 

 

しかし、感電する危険はありませんが火災の危険ははらんでいます。これは、通常の12Vバッテリーでも発生する危険があるので非常に注意しなければなりません。

 

どういうことかというと、水没した時点では火災の危険はほぼありませんが、水が引けて乾燥が始まると火災が起きる可能性があります。その理由はショートです。

 

電気のショートは、中学生の理科の実験で行っているので覚えている方もいるでしょう。プラスとマイナスの間に電気抵抗となる電球やモーターなどを挟まないと火花が散ってショートします。この現象が水没後のクルマで発生する危険が高まっています。

 

 

その理由は、泥水が配線に付着してその部分を腐食させてしまうためで、乾燥して水気がなくなると腐食した部分でショートして火災が発生します。12Vバッテリーが電力をたくさんため込んだままの状態だと、ショートしたことで車一台炎に包むことくらいたやすいでしょう。

 

特に、海辺で塩分の含んだ海水に水没するとかなり危険です。塩水は電気を通しやすいということも、学生時代実験しているので覚えている方もいるでしょう。

 

そのため、塩分が多い海水にクルマがつかると、電気を通しやすくなっており、ショートして発火する危険が高くなります。

 

とはいっても濡れているうちは、電気が通電しても濡れているので燃えることはありませんから、自分のクルマが水没したらゴム手袋で絶縁してからボンネットを開け、バッテリー端子を外すようにします。この時、必ずマイナス端子から外し次にプラス端子を外しましょう。

 

その理由は、クルマのボディはマイナス端子が接続されているので、逆の手順でプラスから外した場合、その配線がボディに接触してショートする危険が高いからです。

 

このことは、日産自動車の台風災害時のQ&Aでも紹介されているので、一度確認してみるとよいでしょう。

 

では、話をもとに脅してEVやHVの駆動用バッテリーはどうかというと、こちらは厳重に守られているので感電の心配も火災の心配もほぼありません。仮に、水没してもブレーカーが作動して電力をシャットダウンしているため、多くの場合は安全です。

 

しかし、かつて2021年に佐賀県でリーフが水没した後、自然発火した事故が報道されました。この事故の当時の写真を見る限り、リーフは全焼せずに鎮火しています。

 

通常リチウムイオンバッテリーによる火災なら、完全にすべてのエネルギーを放出するまで燃え続けるので全焼するはずと考えられます。

 

つまり、この火災は12Vバッテリーのショートによる火災が濃厚なのではないかと思われます。そこで、先ほどの12Vバッテリーのターミナル外しは非常に重要となるわけです。

 

しかし、アメリカではテスラが燃え、中国でも数多くのEV車が燃えています。リチウムイオンバッテリーはスマホなどにも使われ、身近なのでその発熱の凄さ、そしてちょっとしたことで発火や爆発を見聞きしたことがあるでしょう。

 

つまり、クルマに頑丈に搭載されているリチウムイオンバッテリーは、ブレーカーにより電力は遮断されますが、熱暴走により火災が発生する危険は残されているということです。

 

このようなことから、水没したEV車やHV車は感電の危険はほぼないですが火災の危険はあるということを覚えておいたほうが良いでしょう。

 

特に水没しているときはいいですが、引き揚げてから数時間で燃えることは海外ではよくある話なので、引き上げを個人で行うのは絶対避けたほうが良いといえます。