ダイハツ不祥事の発生からクルマの安全性を考えてみる
2023年4月に、ダイハツの内部告発により、ダイハツが海外向けに輸出される車両に対し、内装の安全性能に改ざんがあったことを発表しました。
それは、側面衝突実験に通過しやすくさせる措置で、販売されるクルマとは異なっていたということです。
安全性を重要視するクルマにはあってはならない不祥事ですが、近年多くのメーカーで不祥事が起きており、クルマが安全なのか疑問に思う方も少なくありません。その辺を深堀してみます。
参照元:https://www.daihatsu.com/jp/company/know/04.html
今回不祥事が発覚したのは、東南アジアに輸出されているヤリスエイティブ(トヨタブランド)」「アジア(プロドゥアブランド)」、2023年6月から生産開始予定だった「アギヤ(トヨタブランド)」と、開発中の1車種だったといいます。
不正を行った場所は、側面衝突時にドアトリムと呼ばれるドアの内張の破損が鋭利にならないよう意図的に壊れ方を操作しました。
このことが内部告発されて今回問題となっていますが、実際は販売される正規のドアトリムを用いても破損は鋭利にならなかったといいます。
参照元:https://www.perodua.com.my/our-models/axia.html
開発陣は、不正を行った理由についてドアトリムの壊れ方に不安があったため、合格しやすいように不正をしたといっています。
まず、この時点でなぜ正規の手続きを踏んで設計変更できなかったのかが疑問です。しかも、正規のドアパネルでも全く問題なかったパーツを不正な製品と差し替えるなど通常では理解できません。
しかし、このような不正は開発陣への企業からのプレッシャーが大きかったと推測できないでしょうか。モデルチェンジの時期も決まっており、それに合わせて検査に合格させなければなりません。
技術があるのに非常に残念なこととしか言えないでしょう。
今回の不正のあった場所は、内装なので万が一の事故で乗員への攻撃は非常に危惧されます。そこで日々メーカーは内装の壊れ方を研究し、乗員を傷つける心配が少ないような壊れ方になるようにしています。
これは、現行モデルですでに販売されている車両も開発が進化されており、小改良などでユーザーがわからない場所の変更が行われます。
つまり、改良を加えるなら正規のルートで申請すればよかったという単純な話であり、それを怠った開発陣に問題があったわけです。
このようなことは、なにも自動車メーカーだけに行われていることではありません。トヨタディーラーも先日車検の不正問題で大きな話題になりました。
つまり、多くの場所で不正は行われていると思ったほうがいいといえます。
しかし、失敗を繰り返しながら進化しているのが私たち人間でもあり、クルマ業界も数多くの失敗を繰り返し成長してきました。特に大きな成長は中古車市場でしょう。
かつて中古車市場にはメーター改ざんや事故車隠匿などが横行していました。それがメーター管理システムを導入したことにより、走行距離を改ざんした中古車はほとんど見られなくなりました。
さらに事故車に関しても、ユーザーへの認知度も広がり、そこに買取店が多くなったことから事故車査定に対する目が非常に厳しくなり、事故車を隠して売る事もなくなっています。
隠して売る方法は、このように多くの場面で見られてきましたが、新車で行われていたことが今回大きな問題となりました。三菱やフォルクスワーゲンの例もそうですが、不正で得する人は誰もいません。
不正をしたときはその張本人は一時難を逃れますが、その後必ずやり玉にあげられどん底に引きずり落されます。
ただし、残念なことに国内ではそれほどこの問題が取り上げられていません。今回発覚した不正された車種が日本国内で販売されていなかったことが、あまり国内で大きな話題にならない理由でしょう。
しかし、日本を代表するトヨタの傘下であるダイハツの不祥事であり、しかも日本車を信用して購入してくれる海外のユーザーをだましていたことはかなり罪が重いといえるでしょう。
多くの自動車メーカーが世界中にあり、最近は中国や韓国のクルマも世界を席巻しています。その中において、老舗の日本の自動車メーカーの不祥事は、もう少し日本国内で騒いでもよいのではないでしょうか。
もちろん、これにあたりダイハツでは第三者委員会を立ち上げ、今回の不正の調査にあたると発表してります。しかもタイに豊田会長が赴き、関係者に説明会を行っているといいます。
同時にダイハツが量産品を用いて車内で側面衝突に実験を行い、要件を満たしていることも豊田会長は確認し、リコールせずに販売を継続すると決定したようです。
日本車は、日本だけで販売されないグローバルな商品なので、販売される日本車でも国内で走行しているクルマとは異なる部分も多くあります。また、それぞれの国ごとで細かく基準も決まっており、その国の基準に合わせた設計でなければなりません。
クルマの安全性は、衝突安全性と予防安全性能がありますが、今回は衝突安全性に問題がありました。これが、高度な技術が使われている予防安全性に波及しないことを切に願います。